12-2、須賀川
 この宿のかたわらに、大きな栗の木陰を雨露をしのぐ頼みとして庵を結び、世を避けて隠栖(いんせい)する僧がいた。
 橡(とち)の実拾う深山(西行法師の歌による)の暮らしもこのようであろうか。
 閑雅なものだなとゆかしく思われ、懐紙に書きつけた。
 栗という文字は、西の木と書いて、西方浄土に縁があると、行基(ぎょうぎ)菩薩は一生杖にも柱にもお使いになったということである。
13
世の人の見付けぬ花や軒(のき)の栗
(世間の人が見ようともしない栗の花を、軒近くに植えている草庵の主は、行基(ぎょうぎ)菩薩(ぼさつ)に心を寄せているのであろうか。
 世の人から隠れて住むこの庵の主人は、まるで栗の花のように人目につかないようにしている。
 私はこんな生き方に深く共感するのだ。)

行基菩薩ー奈良時代の高僧。
        諸国をめぐって人々の福祉に尽力した。
西行法師の歌
「山深み岩にしたたる水求(と)めむかつがつ落つる橡ひろうふほど」(山家集)


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